株式会社アゲル30年ビジョン②

序論 ──「うまい」が正義
30年ビジョン①で書いたのは、どこで・いくら稼ぐかという事業の骨格でした。この記事のテーマはその中身、何を出して勝ち続けるのかです。
結論から言います。30年勝ち続けるための根本は「うまい」ことです。 立地も、内装も、SNSも、接客も、すべてはうまい料理を届けるための手段でしかありません。
そしてもうひとつの前提。人間の欲は止まりません。 一度おいしいものを知ったお客様が、その下のレベルに戻ることはありません。
■インフレの時代に、店は2つに分かれる

これからインフレはさらに続きます。食材も人件費も家賃も上がる。そのとき店には2つの道しかありません。
ひとつは価格を守る道です。価格を据え置いたまま原価が上がれば、削れるのは中身だけ。素材を薄くし、手間を減らし、「安いだけの店」になっていきます。
回転寿司を見てください。もう料理人が食べたいと思えるネタは、ほとんど残っていません。 あの価格を維持したまま今後もインフレに耐えるなら、ネタはさらに薄くなり、サイドメニューで売上を作る——つまりファミレス化していくしかない。それは私たちが目指す場所ではありません。
もうひとつはうまさを上げる道です。価値が上がればお客様は価格に納得する。利益が残れば、さらに良い食材と技術に投資できる。この循環に入った店だけが30年選ばれ続けます。私たちは迷わず後者を選びます。
■だから「3つ星の味を、もっとカジュアルに」
うまさを上げると言っても、青天井に高級化するわけではありません。私たちのミッションは「3つ星の味を、もっとカジュアルに」です。
3つ星レストランは料理もサービスも一級品ですが、価格も一級品です。しかし使っている食材は、一部の高級食材を除けば普通に流通しているものです。一般的な食材に、高度な技術と手間をかけて高級料理に仕立てているのが3つ星の正体です。
そして、すべてのお客様が手の込んだ高級料理を望んでいるわけではありません。多くの方は、おいしい料理を手頃な価格で、リラックスした空気の中で楽しみたいと思っています。特にメインは素材の質が満足度に直結します。良い肉は、凝ったソースをかけなくても、常温に戻して表面を乾かしてシンプルに焼くだけで十分にごちそうになります。
3つ星の技術のうち「価格を押し上げている部分」を削ぎ落とし、「味を決めている部分」だけを残す。 これが私たちのメニュー開発の原理であり、インフレ下で価値と価格を両立させる唯一の道です。
■うまさの土台は、自分たちで作っていること
うまさを上げ続けられるのは、食材を自分たちで作っているからです。丹波農商グループ(生産)と丹農食品(加工)がその土台を支えます。
- 但馬牛(繁殖70頭・肥育50頭)—— 自社ブランド牛として旗艦店のメインへ
- 豚事業 —— 新たな柱。WILD BBQ STADIUMのプルドポークやスペアリブの原料にもなります
- 丹波栗 —— 渋皮煮を軸に、2026年から高齢農家の畑を引き継いで拡大
- 丹波市島米 —— 自社堆肥で土から作る、5キロ5,000円の高価格帯ブランド米
- マスカットベーリーA —— 「天ぷらとワイン」を成立させる自社ワインの軸
各ジャンルでナンバー1の食材を持つ強みは、値引きや在庫調整をしなくても、作った分だけ売れることです。そして原価が読める。インフレで他店が中身を削っていくとき、私たちだけは中身を上げられます。
■料理開発のキモは社内SNS

では、うまさはどこから来るのか。社内SNSです。
私たちが追いかけるのは2つ。感度が高くベンチマークにしている店と、料理系インフルエンサーです。何が流行っているか、どんな組み合わせが受けているか、盛り付けや温度帯はどうか——これを絶えずキャッチアップし続けることが料理開発の実体です。
- ①追う —— ベンチマーク店と料理系インフルエンサーを日常的に見る。自腹でも食べに行く(勉強代は会社が支援します)
- ②上げる —— 見つけたものは社内SNSへ。個人の発見を全店の資産に変えるのがSNSの目的です
- ③試す —— 真似ではなく、うちの技術と食材でアレンジする
- ④出す —— 実際にお客様に出して反応を見る。ここが本当の審査
- ⑤定番化 —— 数字と反応が良ければ全店へ展開する
このサイクルが止まった瞬間、味は古くなります。メニュー開発は本部の仕事ではなく、現場全員の日常業務です。社内SNSがメニュー開発のためにあるのは、そういう理由です。
■結論 ── 30年後も「あの店はうまい」と言われるために
インフレは続き、他社は中身を削っていきます。その中で私たちは、垂直統合された食材と3つ星の技術の削ぎ落とし、そして社内SNSによる終わりのないキャッチアップで、うまさを上げ続けます。
人間の欲は止まりません。だからこそ、止まらずに応え続けた店だけが30年後に残ります。その主語は本部ではなくあなたです。切り口の作り方はイノベーションを生む業態開発法を読んでください。