数字の意識について
序論
私は経営とは社長だけがやるものではなく、店長が中心になって、社員、アルバイト全員を巻き込み、店でやっていくものだと考えています。
そのときに共通言語になるのが数字。
売上、原価、人件費等色々ありますが、うちで最も大事な数字は「社員一人当たりの営業利益」です。
売上を上げるのは経営ではありません。
経営者の仕事は「社員一人当たりの営業利益」の最大化です。
本論
① 社員一人当たりの営業利益とは
一人当たりの営業利益とは、
粗利 − アルバイト人件費
を、
その事業に携わる正社員数
で割ったものです。
※ここでは、正社員の人件費は含めていません。
この指標を最も重視している理由は明確です。
この数字が正社員の人件費を上回って初めて、その事業は実質的に黒字だといえるからです。
逆に、この水準を下回れば、会社として利益は残りません。
賞与の原資も、次の投資余力も生まれません。
② 当社の基準は「月75万円」
当社では、月75万円をひとつの基準にしています。
社員一人当たりの営業利益が毎月75万円以上あれば、夏冬の年2回、各40万円前後の賞与を支払っても、なお会社には年間300万円程度の利益が残ります。
この水準は、
- 事業が成長する
- 従業員に成果を還元できる
- 会社にも利益が残る
という3つが両立する、ちょうど良いバランスだと考えています。
売上が大きいかどうかではなく、社員1人分あたりで見て利益が残るかどうかが重要です。
③ なぜ「社員一人当たりの営業利益」が最重要KPIなのか
以前は売上をKPIにしていた時期がありました。シンプルで分かりやすい反面、売上という指標には致命的な欠陥がありました。売上が高くても、社員が増えれば一人あたりの生産性は下がり、アルバイトの勤務時間をコントロールしなければ人件費は膨らみ続けます。結果として、以下の2つの問題が常態化していました。
- 社員の配属数を必要以上に増やし、減らす努力・育てる努力をしない
- 自分たちが楽をしたいために、アルバイトに締め作業やスタートの準備を任せ、勤務時間のコントロールができない
これらはいずれも「売上さえ上がっていれば問題ない」という意識から生まれるものです。この構造を根本から変えるために、KPIを「社員一人当たりの営業利益」に変えました。
④ KPI変更がもたらした変化
変更当初は混乱もありました。アルバイトと社員の対立構造がより顕著になったり、現場での摩擦も生まれました。今でもその課題が完全になくなったわけではありません。
しかし時間をかけて最も大きく変わったのは、ボーナスに対する意識です。
以前は、ボーナスが「天から降ってくるもの」でした。今は違います。「自分たちが利益を作り出し、つかみにいくもの」という意識に変わっています。この意識の変化こそが、KPI変更の最大の成果です。
⑤ 日々の運用:ダッシュボードで数字を追う
「社員一人当たりの営業利益」は当社の最重要KPIであり、金井(AI)の予実ダッシュボードでいつでも確認できます。さらにPDCAダッシュボードの「原価・人件費の改善点」が、月次PLからその店のボトルネックを毎月自動で示します。数字を探す時間は要りません。示されたボトルネックを潰すことに時間を使ってください。

(実際の画面: 予実ダッシュボード——売上・人件費率と並んで「一人当たり営業利益」が毎日出ます)

(実際の画面: PDCAダッシュボード「原価・人件費の改善点」——潰すべきボトルネックと、改善したときの営業利益/人への効果が自動で示されます)
⑥ 人件費はシフトを組んだ時点で決まる
一人当たり営業利益を左右する最大の変数は人件費であり、人件費は月末ではなくシフトを組んだ時点でほぼ決まります。だから当社では、シフト作成をAIが担います。単なる効率化ではありません。組んだ時点で人件費率の予算を達成するように組み、店舗間の社員のパワーバランスの均衡と不足シフトの平準化まで織り込みます。営業が始まってから人件費を削るのは後手です。シフト確定の瞬間が、その月の利益の最初の勝負所だと考えてください。

(実際の画面: シフト管理アプリ——右上の「AIサポート」がシフト案の作成・調整を担います)
原価、アルバイト人件費も、毎日の速報値と月2回の確定レポートで追いながら日々コントロールする風土が、徐々に出来上がってきました。
数字は見るためにあるのではなく、動かすためにあります。予実の差異に気づき、翌日の行動を変える。このサイクルを全員が回すことが、経営への参加です。
結論
経営とは、数字を通じて全員が当事者になることです。
「社員一人当たりの営業利益」という一本の軸を持つことで、店長も社員もアルバイトも、同じ方向を向いて動けるようになります。難しい経営理論は要りません。毎日の予実ダッシュボードを見て、昨日より一円でも利益を残すために何ができるかを考える。その積み重ねが、強い店をつくります。
数字は怖いものでも、苦手なものでも構いません。ただ、目を背けないこと。それが「数字の意識」の第一歩です。